ほとんどの査読付きジャーナルでは、研究者がピア（peer：同僚）である他の研究者の論文を査読することが必須とされています。私たちは「なぜ学術出版のルールやコンベンションは変わり続けるのでしょうか？そしてどうすればその変化に送れずについていけるのでしょうか？」の中で査読について触れ、「査読者に対する回答レターの効果的な書き方：ヒントとテンプレート」はより具体的に、査読者に対する効果的な回答レターの書き方を取り上げました。今回の特集ではその反対の立場から、「査読者になること」について考えてみたいと思います。
査読の原則について考えた後に、初めて査読をする方が、著者の論文の質を高めるような査読コメントを書くのに役立つフレームワークのサンプルをご紹介します。
利益相反がある場合は査読を断ること
査読は偏見がなく常に公平であることが求められます。そのため、査読の依頼を引き受ける前に、利益相反がないかどうかをよく考えなければなりません。査読者の立場にあって、著者との関係から論文を好意的／非好意的に評価することにつながる要素は、すべて利益相反です。論文が（a）過去に一緒に論文を書いたことのある共著者、（b）同じ学部やグループのメンバー、（c）自分の教え子やメンター、（d）個人的な友人、（e）仕事上のライバルなどによって書かれたものである場合には、査読を断る、あるいは少なくともジャーナルエディターにその旨を伝えるべきです。また、論文が出版されることによって、経済的あるいは個人的な利益を得る可能性があるときにも、査読は辞退すべきです。相反利益に該当するかどうか定かでないときには、ジャーナルのガイドラインを調べるか、ジャーナルエディターに相談してみましょう。 相反利益の考え方の例として、国際的な出版社であるエルゼビアでは、次のようなファクトシートを公開しています。また、国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)は、次のように査読者の役割と責任を示しています。
査読者はジャーナルエディターに対するアドバイザーという立場にあります。つまり、査読は単に「アクセプト」または「リジェクト」することではないのです。査読コメントを書くときには、なぜそのような提案や指示をするのか理由を記載し、ジャーナルエディターが十分な情報を得た上で適切な判断ができるようにしなければなりません。文法や句読点などの指摘よりも、論文の学術的な側面からのコメントのほうがはるかに重要です。しかし、言語的な質があまりにも低く、内容が理解できないときにはもちろん、ジャーナルエディターにその旨を指摘する必要はあります。この後のセクションでは、重要なポイントをもらさずに効果的な査読コメントを書くときに役立つサンプル・フレームワークをご紹介しますので、ぜひご覧ください。
査読コメントは論文の著者に送付されます。それ故に、査読者は、どうすればその論文がより良いものになるのかを著者にアドバイスできる、非常に影響力のある立場にあると言えます。「アクセプト」と「リジェクト」のどちらを提案するかに関わらず、査読者のフィードバックやアドバイスは著者にとってとても有益なものです。査読者が特に注意しなければならないことの一つは、著者に査読者自身の論文を引用するよう提案するときです。これは、慎重に行わなければなりません。なぜなら、査読は、査読者ではなく、著者のためのものとして受け止められなければならないからです。最後に、査読コメントは、著者への敬意が伝わるように書くことが求められます。残念ながら、著者を見下したような、あまり役に立たない査読コメントを目にすることが多々あります。査読は、対等な立場で、敬意をもって行ってください。
査読者が投稿論文を受け取るときには、取扱いに十分に注意し、守秘を徹底しなければなりません。誰かと論文の評価について議論したり、第三者に論文の内容を漏らしたりすることはあってはなりません。また、査読をした論文から得た知識を、査読者自身の個人的な利益のために利用することも許されません。
時間がない、あるいは論文で扱われている分野の専門性が足りない、といった理由で適切な査読ができない査読者は、そもそも査読を引き受けるべきでありません。
ジャーナルの多くは、査読者に査読コメントを書き込む書式を提供していますが、そのような書式がない場合には、下記に示すフレームワークが役に立つでしょう。
"This paper discusses _______________. The main contribution of the paper is ____________."
（この論文は、_______________について議論している。この論文の主要な貢献は____________である。）
"I recommend that this paper be accepted."
（この論文をアクセプトすることを勧める。）
"I recommend that this paper be accepted after minor revision."
（少しの修正がなされた後に、この論文をアクセプトすることを勧める。）
"I recommend that this paper not be accepted without major revision."
（大幅な修正がなされない限り、この論文をアクセプトすることは勧められない。）
"I recommend that this paper be rejected."
（この論文をリジェクトすることを勧める。）
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皆様が査読者となったとき、今回ご紹介したヒントがお役に立てば幸いです。ThinkSCIENCEでは、初めて査読をされる方、何度も査読をなさっている方、その両方の方々を、査読コメントの英訳や英語コメントの校正など、様々な方法でサポートしています。論文の著者が、コメントのおかげで論文をさらに良いものにすることができたと実感するような、非常に読みやすく、質の高い査読コメントの作成をお手伝いします。
また、効果的な査読コメントの書き方について質問などございます場合にも、遠慮なくお問い合わせください。査読という重要な任務を担うお客様をThinkSCIENCEは全面的にサポートいたします。
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