タイトルと抄録の次に読者が目にする序論(イントロダクション)は、力強いタッチでスタートさせる必要があります。序論は、あなたの研究にどのようなサイエンティフィック・臨床的価値があるのか、あなたの論文がなぜ注目されるべきなのかを読者に示すチャンスです。
タイトルと抄録の次に読者が目にする序論(イントロダクション)は、力強いタッチでスタートさせる必要があります。序論は、あなたの研究にどのようなサイエンティフィック・臨床的価値があるのか、あなたの論文がなぜ注目されるべきなのかを読者に示すチャンスです。
あなたの研究におけるこれまでの成果、現在のテーマそして今後の目的を紹介し、また論文のアウトラインを述べる、という目的が序論にはあります。良い序論は明確な基盤の上に立ち、読者を方法、結果、考察へといざないます。
この特集記事では、効果的な序論を書くための10個のヒントをご紹介します。これらのヒントはオリジナル研究結果を発表するフルペーパー(原著論文)やレターを書くのに役立ちます。ヒントのいくつかはある特定分野に適していますが、より幅広い応用も可能です。
最初の段落で研究領域をおおまかに説明した後、主要テーマへと的を絞っていくことで、あなたの研究が広大な研究領域のどこに位置するかを明白にします。これによってあなたの研究論文を、該当分野の専門家だけでなく異分野の研究者にとっても受け入れやすいものにします。
研究の目的や重要性の記述がおろそかな論文は、「研究テーマの重要性が示されていない」あるいは「明らかな理論付けに欠けている」ことを理由に、ジャーナルへの掲載を拒否されることがよくあります。研究のゴールは何なのか、なぜ読者がその結果に興味を持つべきかを述べましょう。書き方の基礎は、”We aim to do X, which is important because it will lead to Y.”(Yを導くために重要だからXを行う。)のような簡単な構造で十分です。
重要な研究テーマである、とただ単に言うのではなく、そのテーマが重要である理由を示しましょう。.
特定の研究テーマに的を絞り、最も関連性が高い最新の文献をくまなく引用しましょう。既報文献の概説は完全でなければなりませんが、過度に長過ぎてはいけません。総説を書いているのではないことを忘れないでください。もし序論が長過ぎる、あるいは文献数が多すぎる場合には、各論文を個別に引用する代わりに、それらを引用している総説を引用するのも一案でしょう。
“Many studies have found a significant association between X and Y [4-15].”(多くの研究が、XとY間の有意な関連を見出している[4-15])という文を見てみると、あまりに多くの文献が引用されています。これらの参考文献[4-15]を引用することで、XとY間の関連をわかりやすく概説できるのかもしれませんが、この文章には十分なコンテクストがなく、また、引用した過去の研究についての説明も得られません。なぜ多くの文献を引用する必要があるのかを特定しましょう。たとえば、“A significant association has been found between X and Y in men [4-7], women [8-11], and children [12-15].”(男性[4-7],女性[8-11]および小児[12-15]において、XとYが有意に関連することが見い出されている)とすれば、各引用の価値を示すことができます。
実証研究における研究の枠組みは仮説によって効果的に構築することができます。たとえば、“In this study, we show that X is related to Y by method A”(本研究では、A手法を用いてXがYに関連することを示す)と言う代わりに、“In this study, we hypothesize that X is related to Y, and we use method A to test this hypothesis.”(本研究では、XがYに関連すると仮定し、A手法を用いてこの仮説をテストする)と言うことができます。形式科学研究や探査研究では、“In this study, we examine the following research question: Is X related to Y?”(本研究では「XはYに関連するのか?」という疑問点を検証する)のように研究課題を提示してもよいでしょう。研究課題は必ずしも疑問文である必要はありません。”In this study, we investigate whether X is related to Y." (本研究では、XがYに関連するかどうかを検討する)のように、平叙文で課題を表すこともできます。序論における仮説と研究課題は、あなたの論文の重要な道しるべとして、読者をスムーズに導くために大変重要です。
序論の構成例
導入部の段落:
既報論文の概論(通常は複数段落に及ぶ):
研究ターゲット(通常は1段落分):
論文の概説(オプション、1段落分)
構造化した概要が常用される分野もあれば、そうでない分野もあります。序論で概説することは特に技術分野においては一般的ですが、医学分野ではそうでもありません。自分の研究分野に適切であれば、序論の最後の段落で各セクションの概説をすることを検討してください。例として、“In Section II, we describe our analysis methods and the datasets we used. In Section III we present the results. In Section IV, we discuss the results and compare our findings with those in the literature. In Section V, we state our conclusions and suggest possible topics for future research.”(セクションIIでは、我々の分析方法と用いたデータセットについて検討した。セクションIIIでは、結果を示した。セクションIVでは、結果について考察し、本研究の結果と既文献の結果を比較した。セクションVでは、結論を述べ、将来の研究課題について述べた)などが挙げられます。
序論は長すぎないようにしましょう。目安は500〜1000単語ですが、論文の投稿先ジャーナルのガイドラインや実際の掲載論文などを見て確認しましょう。
序論の目的のひとつは、自分の研究の価値を紹介することです。最も陥りやすい落とし穴の一つは、“Subject X is important.”(研究テーマXは重要である)とだけ述べることです。ただ単にテーマが重要であると述べるのではなく、なぜその研究内容が重要なのかを示してください。例えば、“The development of new materials is important for the automotive industry,”(自動車産業にとって新規材料の開発は重要である)と書く代わりに、"The development of new materials is necessary for the automotive industry to produce stronger, lighter vehicles, which will improve safety and fuel economy."(安全性と燃費効率の向上のため、より頑丈で軽量な車両を造るための新規材料の開発が、自動車産業には必要とされている)と書くことができます。
研究の主要結果を「方法」の前のセクションでまとめるのが一般的な分野の場合、序論にはあまり詳細な結果を書かないようにしなければなりません。なぜなら、結果は他のセクションで発展させていく必要があるからです。“We find that our algorithm requires 55% of the memory and 45% of the computation time of the conventional algorithm,”(我々のアルゴリズムには、従来のアルゴリズムが必要とするメモリーの55%と計算時間の45%が必要であることが分かった)と述べる代わりに、"Here we compare the proposed algorithm with a conventional algorithm in terms of memory use and computational speed, showing that the proposed algorithm is both smaller and faster."(本研究において、我々が提案したアルゴリズムと従来のアルゴリズムそれぞれが使用するメモリーと計算速度について比較を行った結果、提案したアルゴリズムの方が、使用メモリーが小さく、かつ計算も迅速であることが示された)のように、結果の要約をした方がよいでしょう。古いスタイルガイドには、序論には主要な結果を敢えて書かずに読者の興味をそそるように指示しているものもありますが、現在では、医学系ジャーナルを除く多くの領域のジャーナルが、序論で主要結果を概説することを推奨しています。
多くのジャーナルの著者向けガイドラインには、序論を書く上での必要条件が具体的に示されています。たとえば、ガイドラインの中には、単語数の上限、仮説の明記や、主要結果の要約など、特定の内容を要求しているものもあります。
最後のアドバイスをもって、今回の特集記事を終えたいと思います。論文の下書きを始めるときに、最初に考えるべきものの1つが序論です。序論は論文のロードマップの役割を果たします。研究の背景、目的、仮説もしくは課題を明確にすることにより、序論は他のセクションを執筆する際の道しるべとなり、それらのセクションの舞台設定に非常に役立ちます。そのため、計画した序論の下書きに基づいて、方法、結果および考察の全文を書き、その後に序論の文章を完成させる著者が多いのです。
ここでご紹介したヒントが、読者や査読者の興味を引く効果的な序論を書くお役に立つことを願っております。論文の書き方のヒントを他にも知りたい方は、弊社のサイト(効果的なアブストラクトを書くための10アドバイス)をご覧ください。また、私たちのEditingPlusサービスをご利用いただくと、お客様ご自身の原稿に対するヒントやアドバイスを専門分野のエディターが直接ご提供いたします。