影響力の大きい重要な研究結果はできるだけ早く人々に伝え、迅速に情報を共有すべきです。短報/速報(brief/short/rapid communications)として一般に知られる論文タイプは、その名前が示すように、研究結果を研究コミュニティーと簡潔に、そして迅速に共有したいときの選択肢の一つです(ただし、後で説明するように、掲載までに時間がかかる場合もあります)。
影響力の大きい重要な研究結果はできるだけ早く人々に伝え、迅速に情報を共有すべきです。短報/速報(brief/short/rapid communications)として一般に知られる論文タイプは、その名前が示すように、研究結果を研究コミュニティーと簡潔に、そして迅速に共有したいときの選択肢の一つです(ただし、後で説明するように、掲載までに時間がかかる場合もあります)。
では、具体的にはどのようなときに短報/速報を選択するのがよいのでしょうか。
学会での報告、プレプリントサーバー上での査読前原稿の公開、原著論文(フルペーパー)の執筆といった方法ではなく、短報/速報の形でコミュニティーと迅速に結果を共有することには、どういう利点があるでしょうか。
現在の研究を短報/速報として発表するのがよいかどうかを判断するときに、皆さんが考えるべき注意点を見ていきましょう。
それでは実際の例から、それぞれの特色を見てみましょう。
Lancet: Correspondence
Lancet誌の「Correspondence」は、一般的なLancetの読者にとって十分に興味深い話題を扱った極めて簡潔な短報(最長400語)、または、同誌で最近発表された論文についての解説(文字制限250語、掲載されてから2週間以内の論文が対象)です。通常、査読は行われません。自分が現在行っている研究からの予備データや現時点ではまだ発表していない研究を示して、同誌に掲載されている論文を支持したり、その掲載論文が及ぼしうる影響やその研究の厳密さに対して注意を喚起するものです。
Science Magazine: Letters
Science Magazine誌の「Letters」は、広範囲の読者の関心を集める研究、または過去3巻以内に発表された論文について考察したものです。300語の文字制限があり、査読を受ける可能性があります。
The American Mathematical Monthly: Notes
The American Mathematical Monthly誌の「Note」は、「短く、焦点が絞られた、場合によってはインフォーマルな」記事です。論議を刺激したり、読者にとって興味深いことを提示したりするもので、「読者を楽しませる」ものである場合もあります。新規性があるときには査読が行われますが、そうでない場合はエディトリアルレビューで、主に明瞭さが審査されます。
Information and Software Technology: Short Communications
Information and Software Technology誌は、情報およびソフトウェアテクノロジーの分野に特化した研究を掲載しており、「Short Communication」は「新規性および影響力の高い研究結果を迅速に普及させる」ことを目的としています。約4ページを上限とし、すぐに査読が行われ、4週間以内には審査決定が下されます。
Advanced Structural and Chemical Imaging: Brief Communications
Advanced Structural and Chemical Imaging(ASCI)誌の「Brief」では、極めて専門的な分野を扱います。必ずしも標準的な研究論文ではなく、ASCIの読者にとって興味深いもの、または、ASCIおよび他のジャーナルに掲載された研究論文を本格的に再分析したものなどを扱います。エディターの裁量で査読が行われる可能性があり、編集で長さを調整されることもあります。
短報/速報タイプの投稿は、その迅速性から、通常簡潔な論文で、ジャーナルの読者の共通知識に大きく依存しています。したがって簡明なライティングスタイルでありながら、自分の研究結果または意見を、明確かつ正確に、投稿先のジャーナルに合う適切な論調で報告する必要があります。
短報/速報を、他のタイプの論文より迅速に掲載する雑誌もあります。そうでない雑誌は、通常のプロセスが適用されるので、掲載されるスピードも同じです。
投稿しようとするジャーナルの投稿規定を注意深く確認してください。短報/速報を投稿する前に、ジャーナルエディターの確認を必要とするジャーナルと、必要としないジャーナルがあります。各ジャーナルの詳細について最良の情報源は、そのジャーナルの投稿規定です。
「Letters to the editor」と他のタイプの短報/速報が重複している雑誌もあります。読者にとって興味深い予備研究の結果を受理するジャーナルもあれば、受け付けないジャーナルもあります。
「Letters」や、「Correspondence(書簡)」に分類される他のタイプの記事は、読者コミュニティーへの関心点について述べたもの(解説)、または、そのジャーナルに既に掲載された論文についてのコメントと、そのコメントに対する応答が示されたものです。
エディターへのletterの書き方については、後続の特集記事で取り上げます。
特定の分野において(特に数学と物理学分野)、プレプリントサーバーを使うと、優先性の確立、特にテクノロジー分野において論争すべき優先観点の決定に役立ち、また、発表に先立って同僚からの有意義なフィードバックを得ることが可能になります。
プレプリントサーバーに投稿された論文を受け付けないジャーナルもあります。したがって、研究結果を将来フルペーパーとして発表する計画があるならば、論文をプレプリントサーバーにアップロードする前に、発表予定のジャーナルにその点を確認してください。著名なリポジトリ(ArXivなど)を特定例外とするジャーナルもあります。
プレプリントサーバーの詳細については、今後の特集記事で取り上げます。
学会を主な発表の場とする分野(特にコンピューターサイエンス)もあります。フルペーパーの発表を伴わないアブストラクト(抄録)の発表は、短報/速報に相当します。学会や会議でのアブストラクトの発表や報告は、論文発表の事前発表とは考えられていません。ただ、フルぺーパーを投稿する際に、最新の出版倫理に従って、この学会で発表された、または出版されたことを言明し、ジャーナルのエディターに情報を提供する必要があります。
フルペーパー用の「fast-track(迅速な手続き)」があるジャーナルもあります。研究結果をフルペーパーとして迅速に発表したいと考える研究者には、このオプションもあります。
短報の形の発表が、すべての研究者にとって有益なわけではありません。もし、自分の研究が、他のほとんどの研究者と同じく、既知の結果や既存の研究を基に、ゆっくりと系統的に積み上げられるものならば、従来のプロセスを経てフルペーパーとして研究成果を発表しようとおそらく考えるでしょう。
しかし、より迅速に、かつ/または、省略した形で普及させるのが当然であると考えられるようなリサーチコミュニティーに、直接的にかなりの恩恵を与える研究もあります。
研究や執筆に費やした時間から最大限の成果を得るために、出版や情報伝達のニーズ(掲載までのスピード、将来的なフルペーパーの発表など)や、当該分野の慣習に従って、発表の形態を慎重に選んでください。
フルペーパーまたは短報のどちらが良いか判断しかねる場合は、私たちにご相談ください。弊社は年間何千という論文を扱っており、研究の新規性と、その研究分野全体においての位置付け、その両方を判断することができます。
短報/速報では、その短さから、簡潔さ・明確さ・正確さを維持するのが困難です。これら3要素のバランスの維持がここでは重要です。弊社の主要サービスである翻訳および校正に加え、スペシャリストである翻訳者/エディターが、論文の内容についてもサポートとアドバイスをしますので、ご連絡ください。