皆さんは、研究者として、より良い診療、疾病の治療、技術の発展、自然界の探究、理論や概念の構築など、さまざまなゴールを目指して日々努力していらっしゃると思います。このような努力の成果が自分のものとして認識されること、またその情報を管理することは、研究者にとって非常に重要です。
皆さんは、研究者として、より良い診療、疾病の治療、技術の発展、自然界の探究、理論や概念の構築など、さまざまなゴールを目指して日々努力していらっしゃると思います。このような努力の成果が自分のものとして認識されること、またその情報を管理することは、研究者にとって非常に重要です。
しかしながら、これは容易なことではありません。同姓同名の研究者がいる、婚姻により異なる姓を名乗るようになった、または、論文、ウェブサイト、データベースなどによって氏名の表記が一定していない場合などは特に難しくなります。
研究者識別子であるORCID(Open Researcher and Contributor)iDは、このような問題を解決するために導入されました。DOI(digital object identifier:デジタルオブジェクト識別子)が電子出版物に対して発行される永続的な識別子であるのと同様に、ORCID iDは、各研究者に発行される永続的な識別子です。ORCID iDにより、人々は、あなたがどのような研究者であるかをより簡単に認識できます。
この記事では、ORCID iDについての一般的な5つの質問とその答え、また、ORCID iDを使うことが皆さんの研究にどのようなメリットをもたらすかを説明します。
ORCID iDは、研究者の個人情報と公表物に紐付けされる、その研究者に固有で永続的な識別子であり、これを取得することにより自身の過去の業績(査読者としての業績を含む)が確実にクレジットされる一助を担います。過去10年間で、ORCIDは、出版社、研究助成金機関、研究機関などに広く導入されるようになってきました。論文をジャーナルで公表する場合、ORCID iDは、必須情報または任意に付加できる情報となっています。
ORCID iDが発行されると、研究者プロフィールに、全公表物、研究者としての略歴・自己紹介、研究ネットワーク、および社会的な繋がりなどの全ての情報を示すことができます。ORCIDの研究者プロフィールの例は、こちら(https://orcid.org/0000-0002-1825-0097)をご覧ください。
多くのジャーナルが、原稿の中にORCID iDを明示すること、またはオンライン投稿プロセスの中でORCID iDを入力することを求めています。近年では、ORCID iDを必要情報として収集するジャーナルが多くなってきています。責任著者の ORCID iDのみが求められる場合が多いのですが、JMIR PublicationsやScienceOpenのように、著者全員のORCID iDを求める出版社やジャーナルもあります。
責任著者のORCID iDを収集するジャーナル数は、2017年には1,500を超える程度でしたが、今日では7,000以上にもなっており、今後も増え続けるでしょう。2015年末、ORCIDは、著者にORCID iDの提出を求めることに賛同する出版社を募る公開状をウェブサイトに掲載しました。それから1年以内に合計25の出版社や学術団体が賛同の意を示し、そのうち16社(および団体)が2016年末までにそれを実行に移しています。現在の賛同者には、PLOS、Springer Nature、Wiley、SAGE Publicationsなどの業界大手を含む90の出版社やジャーナルが含まれています。賛同する出版社・ジャーナルのリストは常に更新されており(最新の賛同者は2020年8月5日付)、ORCIDのウェブサイトで閲覧することができます。
ORCID iDの導入を開始したのは出版社だけではありません。実際、多くの研究助成金機関がその申請システムの中でORCID iDの使用を奨励または義務付けています。ORCID iDの使用に関するポリシー、またはステートメントを公表した研究助成金機関のリストは、ORCIDウェブサイトで確認できます。
学術コミュニティーを見ても、多くの出版社や学会がORCID iDの使用を強く支持しています。2015年に行われた調査によると、回答者の72%が、ORCID iDの提示を必須事項とすることが研究コミュニティーにとって有益であることに賛同する、または強く賛同しており、それに対し、中立的立場を取る回答者は21%、反対、または強く反対する回答者は7%のみでした。
このサイトにアクセスし、所定のフォームに必要事項を入力するだけで取得することができます。設定したユーザー名とパスワードは忘れないようにしてください。ORCIDプロフィールの管理(情報の更新や表示設定の変更など)や、オンライン投稿システム内でORCID iDの情報をリンクさせる場合などに必要となります。
論文投稿プロセスの中で、その論文とORCID iDとをリンクさせるのが最も一般的です。例えば、多くのジャーナルが利用するオンライン投稿プラットフォームであるScholarOneでは、ORCIDに直接ログインできるようなシステムになっており、ORCID iDがScholarOneアカウントに確実にリンクされます。
ORCID iDを論文の表題ページで表示するように要求するジャーナルもあります。例えば、American Psychological Association(APA)論文作成マニュアル(第7版)では、表題ページの脚注部にORCID iDのアイコン()と各著者のiDのURLを表示させ、各著者の情報にハイパーリンクさせることを求めています。
ORCIDもORCID iDアイコンの使用を強く奨励しており、原稿内での表示に関するガイドラインとして、次の3つの例が示されています。
原稿の修正過程、または採択された時点でORCID iD情報を加えることができるジャーナルも多くありますが、初回投稿時にのみそれが可能であるジャーナルもいくつかあることに注意しましょう。例えば、PNASの投稿規定では次のように述べられています(赤字による強調は弊社によるもの)。
"Author Affiliation: Include department, institution, and complete address, with the ZIP/postal code, for each author. Use superscripts to match authors with institutions. Multiple affiliations are allowed. Authors are strongly encouraged to supply their ORCID. For proper authentication, authors must provide their ORCIDs at submission and are not permitted to add ORCIDs on proofs."
「著者略歴:著者全員の所属学部、機関、郵便番号を含む住所(略さない)を示す。上付き文字を使って著者を各所属機関と対応させる。著者が複数の所属機関に所属する場合はそれを示すことができる。ORCID情報を提示することを強く奨励する。適切に認証するために、著者は、ORCID情報を投稿時に提示すること。プルーフ(校正刷り)の段階で追加することは許可しない。」(弊社による訳出)