研究者にとって、自分の研究を明確、簡潔、かつ正確に要約する方法を習得することは非常に大切です。それは、自分の研究について他者に口頭で説明するときのみならず、研究論文などの文書の中で、読者にわかりやすいように研究の概要を記載するときにも活かされます。
研究者にとって、自分の研究を明確、簡潔、かつ正確に要約する方法を習得することは非常に大切です。それは、自分の研究について他者に口頭で説明するときのみならず、研究論文などの文書の中で、読者にわかりやすいように研究の概要を記載するときにも活かされます。
私たちには、研究論文、学会発表、書籍の各章、研究助成金申請書など、様々な文書の抄録(英語ではabstracts、summaries、précis、synopsesなど)を読む機会があります。それだけに、効果的でない抄録を読んだときに何が起こるのかも経験的に知っています。つまり、ほとんどの場合、その文書はそれ以上読まれることはありません。もし後からゆっくり読もうと思ったとしても、時間が無かったり忘れたりすると、結局読まれることはないでしょう。
しかし、「効果的」な抄録とは、単にできるだけ多くの読者の興味をその文書に向けるものではなく、その文書の本文を読むべきかどうかの判断に役立つものであるはずです。それには、自分の研究に関連が無いので読まないという判断も含まれます。
この特集記事では、効果的な抄録を作成するヒントを紹介します。ここでは学術ジャーナルや学会に投稿する抄録を想定して説明しますが、紹介するヒントは、皆さんが研究者としてのキャリアにおいて作成するであろう様々な文書に応用できるでしょう。
グラフィカルアブストラクト、ビデオアブストラクト、プレーンランゲージサマリー、レイサマリーなどの新しい形態の抄録については、いわゆるenhanced publicationを特集記事で取り上げるときに、詳しく説明する予定です。
読者は、研究論文やその他の学術文書の抄録を読んで、(1) 本文に含まれる情報を即時に理解し、(2) それを基に自身の研究との関連性を判断して、本文を読むかどうかを判断します。
通常、科学的な文書の抄録では、読者がその研究の価値と頑健性を判断しやすいように、著者のクリティカルシンキングが論理的な順序(例:問題提起、目的・仮説、方法、結果、その影響)で説明されます。この順序は本文でも同様です。そして、論文の全文が読まれると、その論文の影響力は、引用の可能性も含めて、より大きなものとなります。
皆さんの論文には、ターゲットとなる読者(自分の論文が有益であろう読者)がいるはずです。したがって、研究内容を明確、簡潔、そして正確にまとめた抄録があり、それがターゲットとなる読者の「本文を読む」という判断、または、それ以外の読者の「本文を読む必要がない」という判断」にすぐに結びついたならば、その抄録は効果的であるといえます。つまり、効果的な抄録を作成すると、読者の時間を無駄にしないのです。
論文(本文)の閲覧が有料であるジャーナルもあることから、無料で閲覧できる抄録は、最も多くの人に読まれる論文の構成要素といえます。また、抄録は、一般的なインターネットまたはPubMedなどの専門的なデータベースの検索により見つけることも可能であることから、効果的な抄録が書けるようになれば、自分の研究が影響を与えうる潜在的な範囲も広がります。
抄録を投稿するジャーナルまたは学術会議の投稿規定を必ず読み、構造、長さ、内容、フォーマットなどの要件を確認しましょう。要件を認識したうえで抄録を書くことで、後から不必要に校正に時間を費やすことが避けられます。
抄録のフォーマットに関する要件を認識したら、抄録の執筆を開始しましょう。科学論文の典型的な抄録の構造を以下に示します。研究分野や研究の重要ポイントにより、特定の構造要素をより詳しく書く場合もあります。重要なのは、ターゲットとなる読者の期待に応えるような抄録を書くことです。
抄録を執筆する際に重要なのは、ターゲットとなる読者を常に意識し、その読者に対して明確かつ簡潔に説明することです。皆さんの論文の読者は当該分野の研究者である可能性が高いのですが、関連分野や全く関連の無い分野の研究者、あるいはまったくの門外漢がその論文に興味を持つ可能性もあります。
すべての学術文書にとって抄録は、研究者または一般の読者が真っ先に目にする構成要素であり、本文が読まれるかどうかの判断の基となる非常に重要な役割を果たします。論文が読まれるということは、他の研究者に何かしらの影響を及ぼすということで、それがさらに自分の将来の研究にも影響したり、共同研究に結びついたり、研究分野の発展に繋がる可能性もあります。だからこそ、抄録が効果的なものとなるように時間をかけて作成することには価値があるわけです。
ThinkSCIENCEでは、論文の内容が明確、簡潔、かつ正確に反映された抄録を作成するための様々なサービスを提供しています。ネイティブの校正者と翻訳者のチームが、お客様の抄録を必要に応じて改訂または翻訳いたします。まだ抄録を作成されていないのであれば、抄録作成サービスをご利用いただけます。弊社のライターが論文の本文を読み、お客様に代わって抄録を作成します。また、ご自身で作成した抄録をジャーナルの要件に従って大幅に短くする、または構成を変更する必要がある場合には、当該ジャーナルのガイドラインに合わせて科学・医学ライティングの補助サービスをご提供します。お客様お手持ちの抄録をもとにプレーンランゲージサマリーやレイサマリーを作成するサービスもご提供しています。抄録作成についてご質問のある方やサポートを必要とされる方がいらっしゃいましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。